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  • 2011.12.11 Sunday
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八月の祝祭( 二 )

 「これが、第二種疑似永久機関搭載型本土決戦用特車『イザナギ』よ!」

 静まりかえった空間に空気の波が生まれ、あらゆる方向へ散った。天井や床や四方を囲む壁や天井から吊るされた多数の照明器具、その他のありとあらゆるものの各々の距離に相応しい時間の差をともなって、波がわたしのもとに返ってきた。果たして静けさは再び取り戻されたが、わたしはその間、瞬きはおろか指先ひとつ動かさなかったのではないだろうか。
 女性は、腰にあてがっていた腕を胸のあたりで一度組なおすと、再び口をひらいたが、今回はムライに先を越されるかたちとなった。

「やあやあ、これはイカルギさん。ご無沙汰しておりました。相変わらず、お美しくてけっこう。なにより、お声が大きくお元気でいらっしゃる。まことにけっこうですねえ。」

「あら、ほんの八十六時間ぶりですわ。で、説明のつづきをさせてもらってよろ
しいかしら、ムライさん。」

 女性は、戦車もしくは特車についての詳細を十分あまりの時間を掛けて語り終えた。その間、一度だけわたしはムライに何かしら耳打ちをされたはずだが、わたしにはうわの空で、ムライが何を話しかけて来たのか、と言った記憶はさだかではない。
 ムライは、一通り語り終えて満足気な表情の女性に対し、わたしの施設部内への案内をとりはかるよう指示をだした。女性は頷き、壁に備え付けの受話器を取って、ごく短い会話の後に、ついていらっしゃい、とわたしを促し、ムライには軽く手を振った。

 わたしたち、わたしとその女性はエレベーターで二階層ほど降った。

「いま、ちょうどイザナギの起動試験を行なっているの。見学しましょう。」

 そう言われて、わたしが連れて来られた部屋の、大きな硝子で仕切られた向こう側には、先程と同型の戦車が二台並んでいた。部屋のこちら側では十人ほどが、卓や壁に据え付けられた計器を読みながらそのつど記録をとっている。そのうちのひとりに、女性は話しかけた。
「調子は、どうかしら。」
「あまり芳しくありませんね。集積したラングがことごとくメタ・テクスト化していきます。二人とも前回より集積率は向上していますが、集積は依然として臨界には到りません。」

「そう。ありがとう。」

 女性が別の者に何事か話しかけ了解を得ると、わたしを連れだって硝子の向こう側へ赴いた。室内に先ほどの者の声で、放送が響いて、試験の中断を報せた。
 戦車から、ひとつづつ人影が降り立った。



…つづく



(このウェブサイトに掲載されている情報は、著作権法に基づき保護されています

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  • 2011.12.11 Sunday
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コメント
良いっす!(b^ー°)

  • 夜考宙ん
  • 2010/05/11 2:37 AM
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