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  • 2011.12.11 Sunday
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八月の祝祭(三)

戦車から出てきた影のひとつが、わたしに猛烈な勢いで走り寄ってきた。

「すごーい。本物の関東軍の将校だ。かっこいいよぅ〜お」

人影は、人影は、人影はなにか勘違いをしているように、わたしには思えた。そう、思えた。まず、わたしは関東軍ではない。わたしは…

「中尉殿、じぶんはイザナギ参号車専任曹長シン・リンインでありまス!」

え、この子、支那人か。大袈裟な敬礼をする。流暢な日本語を話す支那人の子シン・リンインは、

「うわぁ。こいつ、いきなり。なにするんだ!」

シン・リンインは、いきなりわたしに抱きつくと、わたしの着衣、シン・リンイン言うところの関東軍の将校服、わたしのその着衣の臭いを、クンクンと嗅ぎはじめた。なんなんだこいつは。
わたしは、気持ちわるくなって離してくれるよう頼んだが、シン・リンインは到底いうことを利きそうにない。腕力にものをいわせ剥がそうとすると、よけいにしがみつき、なおさら激しくクンクンしはじめた。見かけよりも、力がある。

いかん。軍服がこいつの鼻水とかよだれとかで、ぐしょぐしょだ。もう、いい加減にしてくれ。
わたしは、傍らのイカルギ博士を見やった。彼女はなにくわぬ顔で立っていた。



「イカルギさん。これ、なんとかしてくださいよ」

よろしい。博士はうなずくとシン・リンインの耳元でなにかを囁いた。わたしの着衣にうずめた顔を浮かし博士に反応した。うんうんと何度か大きくうなづいた、だけだった。

「博士、この子はいったいなんなんですか」

「彼女はシン・リンイン。特車イザナギ参号車自律起動システム専任オペレータです。ただし、曹長ではないわ」

「いえ、そういうことではなくて。この子はいったいなにをしてるのですか、ということを訊いているんですよ」

この状況で、わかりきったことじゃないか。まったく、ここの奴らときたら。

「…可以給我摸一下下馬?」

後ろから頼りない声がした。支那語。一五才くらいの女の子。声が小さくてよく聞こえない。と、いうよりもシン・リンインのクンクン煩い。

「不要!」シン・リンインが、突然大きな声をあげた。そして、先ほど女の子を睨んだ。
わたしは予想しなかった、そのシン・リンインの剣幕に驚いた。睨まれた方もすくんでいる。
わたしは、もうひとりのその女の子に声をかけた。

「きみも支那人か。なまえは?」

女の子は、少し考えるようすをみせたが、先ほどと同じような頼りない声で応えた。

「…アヤノ。私はアヤノ、イカルギ・アヤノ」



…つ・づく



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コメント

はっはぁ〜ん( ̄∀ ̄)

そう行きますか…(笑)
  • 夜考宙ん
  • 2010/07/15 4:29 AM
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