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短歌日記:すきまの町



  魚焼きグリルでパンを焼きながら何かを畳む仕草をしてる



 今日は、午前中に並んで食パンを買うことができた。卵を茹でてマヨネーズと和え、サンドイッチを作ることにする。ガラガラの食料庫を眺め、添えるおかずになるものはないかと考える。なんもないな〜。何もないというのは、無か。いや、考えろ。 まだなにもなくはない。すきまとは、有と有の間。
 じゃがいもをひとつ手に取り(すきまを少し広げて)食料庫を閉じる。電子レンジもトースターも壊れてしまったけれど、日常は淡々と動いていく。魚焼きグリルでパンをやくと、生臭さが感じられる気がする。それもすぐに慣れた。


  春霜が土をくづしてゆくらしくやはらかきなか芽吹くものたち


 今朝も寒かった。東北の春はまだ綻んでいない。びっしりと這う霜が世界を輝かせる。皮肉なくらいに。
 「凍ってかちかちになった土を、霜がほぐしてくれるのよ」。農家の大叔母に昔、そう聞かされたことがある。霜柱を踏むとざくざくと大地が鳴く。なるほど。
 まだ白い息が長く空に軌跡を描く時間。弁当をもたせて、主人を仕事に送り出す。ランチをとる店どころか、コンビニも開いていない、すきまだらけの町。でも、
 わたしたちは、生きている。きのうの延長を。


  スーパーで食パンを買う行列に従う日々に飽きはじめてる


 隣の町は、無になった。




 無のことを思う。避難所に暮らす人々の寒さを思う。「命があるだけでよかったね」と、笑って言えますか?東日本を襲った、未曾有の大震災。たった1週間断水しただけで、あんなにつらかったんだ。眠る場所があっても、身をよせあう人がいても、早春の冷たさは身を切るのに…。
 食べるものは、まだ、ある。給湯は無理だが、蛇口をひねれば水は出るようになった。「あそこにいるよりマシだ」と思ってしまう。自分に反吐がでる。
 天気予報では、午後から雪になるらしい。せめてせめて、春の日差しを。偽善者めいた祈りを捧ぐ。
 祈りで腹は膨れないが。


  生者にも死者にも毛布配られて震災の地の夜は更けゆく


 駅前の居酒屋は、物流が断たれたままながら店を開けはじめた。当分は在庫を回して、メニューを限定して提供していくそうだ。皮肉なことに、結構な賑わいである。東京から来たハイエナ、ではなかった、マスコミの男たちが、ビジネスホテルの部屋を軒並み押さえたらしい。「今日はどこに飲み行きますっか?」歩きタバコで。マスコミは嫌いだ。声が大きすぎる。
 出張にきたまま帰れなくなったという主人の同僚と、静かな馴染みのカウンターでささやかに乾杯する。「ブラウマイスターは港の倉庫から、ぜんぶ流されたのよ。あと樽が5本、うちにあるのはこれでぜんぶ」。ありがたく、1杯ずつ大切に飲む。つまみは卵焼き、それから春巻。
 同僚は、地震のとき気仙沼にいたらしい。「もう一件回る予定だったんだけどね、これは普通の地震と違うと思って、帰ることにしたんだ。内陸に続く道がすごく渋滞していた。しばらく走ってラジオをつけたら、あの津波だ。(地震に驚いて車に乗ってから)10分くらいかな。代理店は海の近くだったから…、あそこで 判断を誤っていたら、ダメだったろうね」。数件あった取引先とは、すべて連絡がつかないという。
 数えきれないほどの遺体が、回収しきれずに冷たい海に漂っている。今も。遺体を安置する場所も、焼く場所も足りていない。

 あ・・・。余震・・・。


  旧暦の手帳に挟むすみれ草 春にやさしい折りぐせはあり


 もういやだ。おだやかな記憶の中に逃げ込みたい。テレビを消したら、もしかしたらぜんぶ夢だったんじゃないかって思い込めるかもしれない。

 でも、まだ、終わっていない。
 わたしたちは生きているから。

 終わらないすきまだらけの日常を、埋めるために、生きていかなきゃいけないんだ。





(このウェブサイトに掲載されている情報は、著作権法に基づき保護されています

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