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  • 2011.12.11 Sunday
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みゆきまたなむ

北東北では、GWの今が桜の盛りです。
今年は咲き初めの時期に雨が降り、色が褪せることを心配していましたが、
連休後半は天気が持ち直す模様。

5月には、天皇陛下が、
岩手県の震災の避難所を慰問されるというニュースを見ました。



なんとなく、この歌を思い出しました。
百人一首に取り上げられている、藤原忠平の和歌です。

小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば
  今ひとたびの みゆき待たなむ

小倉山の峰の紅葉よ。もしお前に人間の心があるなら、
もう一度天皇がいらっしゃるまで、散らずに待っていてくれないだろうか。

という意味です。みゆき、とは、「行幸」。天皇のお出かけのこと。
いまの季節なら、「みちのくの 野のさくら花 心あらば〜」と歌いかけるところでしょうか。




木を切り、山を開き、
堤防を築き、土にはコンクリートで蓋をした。
煌々と灯をともして暗闇を払い、
わたしたちは夜に勝ったと、そう思っていた。


現代社会に生きていると、とかく「科学で解明できないもの」を迷信扱いして忌避しがちですが、
こう天災が続くと、「人が自然をコントロールしようなど、なんとおこがましいことか」という、当たり前のことにぶちあたりますね。
もちろん、宗教も神話も完全なものではありません。所詮ひとが紡いだ物語ですから。
「安全神話」なんて、幻だったことに気付いたでしょう?



それでも人は、「畏れること」を忘れてはいけない。
それを証明するネットの記事を紹介します。

http://usio.feliseed.net/paetone/
http://blog.tatsuru.com/2011/04/07_1505.php
http://blog.tatsuru.com/2011/04/08_1108.php




短歌、ひいては和歌を深く学ぼうとすると、
古典に触れることは必須となってきます。
今の日本の学校教育は、明確に「戦前」「戦後」で歴史を線引きしているので、
なんとなく「源氏物語の世界とサムライのいた時代と現代社会が繋がっていること」が実感しづらいように思います。

これを、政治、というカテゴリで見ると、
長い歴史上にはたくさんの断絶があり、為政者の交代もたびたびありましたが、
まつりごと、というカテゴリで見ると、
日本という国が一本の時間軸で繋がっていることがよくわかると思います。

日本には天皇家があるからです。



百人一首の第1番、第2番は、それぞれ以下の歌になります。

秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ 
  わが衣手は 露にぬれつつ(天智天皇)

春すぎて 夏来にけらし 白妙の 
  衣ほすてふ 天の香具山(持統天皇)


第1首の天智天皇の歌、
これは、万葉集に収録されている詠み人知らずの歌でした。
「秋田刈る 仮庵を作り わが居れば 衣手さむく 露ぞおきにける」が変化して、
天皇御製として伝わったもの、とされています。
天皇パクりっすかwwwって、そういう問題ではないのよ。
作者不詳の歌がわざわざ「天皇の歌」とされたのには意味があります。

それは、これらが祈りの歌だから。


秋の田は、豊作の象徴です。第1首は、豊作を祈る歌。
「田」「庵」「衣」と揃っていることから、衣食住を織り込んだ歌を巻頭にもってきたという説もあります。
人々の暮らしよ豊かであれ、と。

白妙の衣は、「禊(みそぎ)」の衣です。
香具山は「天の」という語がつくほどの神聖な山であることがわかります。
つまり、第2首は清めの歌なんですね。
人々の心よ清らかたれ、と。


この配置は、意図的なものであろうと思われます。



日本において、神という概念は、英雄や超人や偉人や宗教家を示す、というわけではありません。
それは「大きな力をもつもの」「異形なもの」「畏れおおいもの」そして、「祟るもの」です。
まつり(祭)、と、まつりごと(政)、は同義の言葉で、
社会の教科書などでは、祭政一致の時代のことばであると説明されます。
祭政一致の社会というのは、スピリチュアルなこととは少し違うと、わたしは考えています。


福島原発で例えてみると、
建物を立派につくり(神殿をたて)、定期的に点検し(祭りあげ)、
部品を交換して(供物)、毎日清掃して廃棄物を適切に処理し(清め、祓え)、
きちんとしていても、若干の犠牲もあることだろう(作業員の被爆、穢れ、贄)
そこまでして、すこぅし、神のエネルギーを分けてもらう。
ルーティンではなく、畏れをもってあたらなければいけない仕事。
これが「まつりごと」の役割ではないでしょうか。


今回の地震では、津波の被害も大きかったです。
海辺の人たちは、祭りをとても大切にします。
豊漁を祝い、神さまをお祭りする、ということももちろんですが、
海難事故の恐ろしさや津波の言い伝えも迷信と片付けず、きちんと向かい合っています。
「ここから下に家をたててはいけない」という石碑の教えを忠実に守った集落は、被害を免れたと聞きます。
日頃の訓練の賜物で、全員が避難できたという学校もありました。
(それでも、日頃の備えがあっても。想定をはるかに超える大津波により、たくさんのかたが亡くなりました。心よりお悔やみ申し上げます)



原子力や、自然。偉大なものの恩恵をうけて生きようとするとき、
必ず、コントロールしきれない、科学で図れない、人の力の及ばない部分がでてきます。
それを見ないふりすることは、もうできない。もちろん押さえつけようとすることも。



せめて、祈りを。



なゐをのがれ 戸外に過す 人々に
  雨降るさまを 見るは悲しき


平成7年の、阪神淡路大震災のときに詠まれた、今上陛下の御製です。
「なゐ」は、地震の古い言い方です。
雨が降っているのを見るのが悲しい、というのは、「冷たい雨よ降り注ぐのを辞めよ」という祈りでしょう?



祈ったからどうだっていうんだよ、と思うこともあります。
実際に、なんにも変わらないかもしれません。
でも、日本には、
二千年も昔から、民のために祈り続けてきた一族が存在するんだなぁと思うと、少しだけやさしい気持ちになれるかもしれません。
(暗い夜のなかで、やさしい気持ちを保つって、すごいことだと思うんだ)



連休いっぱいまで、桜の花が散りませんように。
春の訪れが、すべての祈るひとたちの、安らぎになりますように。。。


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  • 2011.12.11 Sunday
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コメント

荒れた大地にも、命在る物が 芽吹くように

痛みと傷みを受けた多くの「心」に、暖かい「時」が巡る事を人として人に願います…
  • 夜考宙ん
  • 2011/05/09 12:47 AM
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