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  • 2011.12.11 Sunday
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短歌日記:すきまの町



  魚焼きグリルでパンを焼きながら何かを畳む仕草をしてる



 今日は、午前中に並んで食パンを買うことができた。卵を茹でてマヨネーズと和え、サンドイッチを作ることにする。ガラガラの食料庫を眺め、添えるおかずになるものはないかと考える。なんもないな〜。何もないというのは、無か。いや、考えろ。 まだなにもなくはない。すきまとは、有と有の間。
 じゃがいもをひとつ手に取り(すきまを少し広げて)食料庫を閉じる。電子レンジもトースターも壊れてしまったけれど、日常は淡々と動いていく。魚焼きグリルでパンをやくと、生臭さが感じられる気がする。それもすぐに慣れた。


  春霜が土をくづしてゆくらしくやはらかきなか芽吹くものたち


 今朝も寒かった。東北の春はまだ綻んでいない。びっしりと這う霜が世界を輝かせる。皮肉なくらいに。
 「凍ってかちかちになった土を、霜がほぐしてくれるのよ」。農家の大叔母に昔、そう聞かされたことがある。霜柱を踏むとざくざくと大地が鳴く。なるほど。
 まだ白い息が長く空に軌跡を描く時間。弁当をもたせて、主人を仕事に送り出す。ランチをとる店どころか、コンビニも開いていない、すきまだらけの町。でも、
 わたしたちは、生きている。きのうの延長を。


  スーパーで食パンを買う行列に従う日々に飽きはじめてる


 隣の町は、無になった。



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モテたい。【番外篇】

ちょっと今回は本筋を外れた話を。

実は、モテそうな趣味を見つけたんです。
ロードバイク。ようするにちょっと本格的な自転車です。

アウトドア。健康にいい。そして、いま流行り。
どうですか?モテそうでしょ?

きっかけは友人の紹介。
なにか直感的なものを感じて、思い切っていい奴を買いました。給料、まるまるひと月ぶん。
ペダルを踏んだ瞬間、うひい、と思いました。実際は、うっほほほと叫んでいたようです。踏めば踏むだけ力がスピードに変わり、スピードは問答無用 で僕を動かします。左右に体重を動かせば、車体はそれに追従し、タイヤのゴムをアスファルトに押し付けて弧を描きます。その、自転車に乗ることで起きる当 たり前の事実が、異常なまでに鮮明で、激しくて、僕は、やっとくどいた女の子のパンツに手を入れるときと同じくらい興奮していたのです。

それから、僕は毎週末を楽しみに働きました。
今週はどこに行こうか、そればかりを考えてじっと平日を過ごして、
土曜日の早朝からチェーンに油をさし、タイヤに空気を入れ、ヘルメットにサングラスで、1日100kmほどを走り続けました。
すこしタフな仕事が続いて疲れていても、かならず早起きして走っていました。まるで、恋人に会いに行くみたいに。



2011年3月13日の更新はお休みします。

いつも『歌クテルwebマガジン』をご覧くださり、ありがとうございます。

報道などで連日伝えられております通り、東北地方太平洋地震の被害は日を追うごとに甚大さを増しております。

そのことに鑑み、今週は更新をお休みさせていただきます。

被災者の方々の、一日も早い救済と復興を願っています。

読者の皆様がたにおかれましても、どうぞご自愛ください。



連載小説 『部屋』 【中編】

 魔王は静寂という言葉の本当の意味をはじめて理解したと思った。この世界こそは静寂であった。静寂とはこういうものかと思った。空は眼下にあった。頭上には摂氏マイナス一○○度の中間圏が、中間圏を抜けたその先は摂氏二千度の熱圏が、さらにその先にはマイナス二七○度の宇宙が広がっていた。高度五万メートル、ここは空の果てであった。視界には金色に輝く火球の群があらわれては消えた。魔王の遥か上空、低軌道上を周回するデブリが惑星の引力に堪えかねて落下していく。火球は成層圏へ達するまえに全て燃え尽きた。魔王と火球までの距離はすべて何千メートルとあったが、火球は炎の一筋一筋までが鮮明に見えた。腕を伸ばせば掴めるのではないかと思えた。魔王はこれから己が為すべきことを十分理解していた。いや、十分とはいえないかもしれない、しかし、為すべきことはひとつしかなかった。


 青年は窓を見ていた。正確に言えば窓の外の雪を見ていた。もっと正確に言えば窓の外に降る雪の粉が、―いや、もうよそう。私は青年ではないし、これ以上は私の憶測に過ぎないのだ。何れにしろ青年は降り続く雪を見ていた。世界のすべてには雪が降っていた。それは、積もることもなくゆっくりと降り続く雪だった。文字とは陰翳、すなわち闇で書かれた言葉だ。ひとは墨で文字を書き、インクで文字を書き、鉛筆で文字を書き、パソコンで文字を書かいた。すべての文字は光の欠損としての陰翳、すなわち闇として表出される。言葉はそれが文字として書かれた瞬間から、内在する意味とは無関係に闇を獲得する。青年はいま、彼が書いた沢山の言葉のことを思い返した。沢山の言葉とともに、沢山の闇を産んだことを思い返した。青年は光で文字を書きたいと思った。だが同時に文字の作り出す闇こそが、自分を支えていたものの一部であることを青年は理解していた。


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