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  • 2011.12.11 Sunday
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連載小説 『部屋』 【中編】

 魔王は静寂という言葉の本当の意味をはじめて理解したと思った。この世界こそは静寂であった。静寂とはこういうものかと思った。空は眼下にあった。頭上には摂氏マイナス一○○度の中間圏が、中間圏を抜けたその先は摂氏二千度の熱圏が、さらにその先にはマイナス二七○度の宇宙が広がっていた。高度五万メートル、ここは空の果てであった。視界には金色に輝く火球の群があらわれては消えた。魔王の遥か上空、低軌道上を周回するデブリが惑星の引力に堪えかねて落下していく。火球は成層圏へ達するまえに全て燃え尽きた。魔王と火球までの距離はすべて何千メートルとあったが、火球は炎の一筋一筋までが鮮明に見えた。腕を伸ばせば掴めるのではないかと思えた。魔王はこれから己が為すべきことを十分理解していた。いや、十分とはいえないかもしれない、しかし、為すべきことはひとつしかなかった。


 青年は窓を見ていた。正確に言えば窓の外の雪を見ていた。もっと正確に言えば窓の外に降る雪の粉が、―いや、もうよそう。私は青年ではないし、これ以上は私の憶測に過ぎないのだ。何れにしろ青年は降り続く雪を見ていた。世界のすべてには雪が降っていた。それは、積もることもなくゆっくりと降り続く雪だった。文字とは陰翳、すなわち闇で書かれた言葉だ。ひとは墨で文字を書き、インクで文字を書き、鉛筆で文字を書き、パソコンで文字を書かいた。すべての文字は光の欠損としての陰翳、すなわち闇として表出される。言葉はそれが文字として書かれた瞬間から、内在する意味とは無関係に闇を獲得する。青年はいま、彼が書いた沢山の言葉のことを思い返した。沢山の言葉とともに、沢山の闇を産んだことを思い返した。青年は光で文字を書きたいと思った。だが同時に文字の作り出す闇こそが、自分を支えていたものの一部であることを青年は理解していた。


連載小説 『部屋』 【前編】

  音速は大変でしょう。百合若は頭上の耳の片方だけをまずは声のするほうへ向けた。魔王は再び同じ言葉を放した。音速は大変でしょう。犬の姿をしたなにかの精霊は、つぎに鼻を天井へ向けた。犬の鼻は、一九世紀初頭のプロセインで造られたシャンデリアの光をまともに受けて美しく濡れていた。音速は大変だろうか。その呟きの方へ、今度こそ犬は顔を向け主人を見た。魔王は犬に、音速はほんとうに大変だろうか、と尋ねた。


「一八九六年の夏、ドイツ人オットー・リリエンタールは彼のハングライダーの最後の飛行試験に失敗した。彼は翌日、死んだ。一九四七年十月、アメリカ人チャック・イェーガーはベル社XS―1を操縦して、マッハ1,06の速度記録を樹立した。リリエンタールの死から人類が音速を超える迄に約五○年を要した。かるく五○年か、たった五○年か、ざっと五○年か。感慨はひとによって違うものだ」と犬の姿をした精霊は応えた。なるほど、大変だなと魔王は息を吐いた。馬鹿な犬だと思った。



 ありがとう、百虎丸。青年は猫にひと言礼をいってから、くわえた本を口から抜いてやった。本は意外に重く、表紙には四ヶ所の噛みあとが残った。青年は本を裏返した。ちょうど同じ辺りに噛みあとは三つ。青年は少し間をおいてから、クスッと笑った。ありがとう、ともう一度いって猫のあごを撫でてやった。猫は瞼をとじており、鼻が少し膨らんだ。喉も鳴らした。眼をとじた猫の膨らんだ鼻に青年が指で触れると、猫の左耳がピクピクッと二回震えた。


Kotonoha-mix(9)

 今回は、2010年12月の文学フリマ終了後に居酒屋(2軒目)で繰り広げられた、歌クテルの“本丸”・A.I嬢と、“営業部長”・里見浩都氏とのトークをお送りしてまいります♪
とても楽しかったけど、2軒目での座談会はちょっと無謀でした(笑)。ヒア・ウィー・ゴー!!(←自棄)


■北枕だからやめてくれ。

里見:今日はある意味、歌クテルの“本丸”とのトークでしょ。連載最終回なの!?みたいな(笑)。
日野:またとないですよー。ところで、歌クテルに絡み始めたのっていつ頃だっけ?
A.I:3号の前だよね。「歌集喫茶うたたね」の歌会があって。
里見:その歌会に行った時に、いろいろ話を聞いて、2号を見せてもらった時に笹井さんの歌が面白くて、「入っていい?」って。
日野:3号あたり充実してたよね、ほんと。
A.I:3号がいちばん人数が多かった。それで3号は2冊同時刊行にしたんだよね。
里見:3号面白かったなあ。あの、青春を燃やした感じっていうのはすごいなと思ってて。3号は自分でも正直150%を出した。それにしても、4年の積み重ねで今こうやって飲んでると思うと、うすらふるえる。歌クテルはありがたいよ、本当に。えーちゃんに足向けて寝られない(笑)。
A.I:頭を向けて寝ると北枕だからやめてくれ(笑)。
日野:東北枕だから大丈夫。太平洋側だからね(笑)。
里見:俺、ありがたいわりには仕事はしてないんだけど(笑)。
A.I:わたしが抱え込むタチなんだよね(笑)。まあ、仕事を苦にしているわけでもなく、好きなんだよ、そういうこと。今、歌クテルの本誌は休刊しているけれど、それはまた別の理由があるんだと思う。


■歌クテルクロニクル。

日野:えーちゃんは、人の短歌を読んで短歌を始めたの?
A.I:それがね、わたし短歌をいちばん始めに作った時は、他人の短歌をほとんど読んだことなかった。百人一首は好きだったけど。
里見:短歌を始める時って、「面白いからやる人」と「受けとめられたからやる人」というパターンがある気がするね。
A.I:はじめは、失業していてすごいヒマだった時に、懸賞にハマってて、懸賞雑誌にたまたま短歌を募集してるのがあって。短歌を書いて送ったら、たまたまなんかの賞に引っかかったの。んで、「わたし才能あるかも……」って(笑)。
里見:これで受けとめられたんだ、っていう。
A.I:そうだね、受けとめられたんだよね。
里見:自分が詩を書きだした時もそんな感じだったよ。
日野:そうだったんだ。
里見:16歳まで書いたことがなくて、高校の国語の授業で「詩を書いて来い」って言われて、夜中までこんこんと5篇ぐらい書いた。授業で発表した後で、今さら恥ずかしいんだけど同じクラスの子に「高村光太郎みたいだな、って兄が言ってたぞ」って言われて。舞い上がるじゃない、そんなの。詳しく知らなかったんだけど、高村光太郎。
A.I:わたしは好きだよ、知恵子抄。
日野:読んだなー、知恵子抄。
里見:男の子は、光太郎に共感できない(笑)。でも、受けとめられたのがあって、そこから家でノートにこつこつ詩を書きだして、はじめて彼女ができた時に見せて「キモい」って言われて(笑)。
日野:わたし詩歌よりも短編小説的なもの書いてたな、高校生の時。国語の先生は、小説は褒めてくれたんだけど、歌は赤ばっか入って返ってきた覚えがあるな。
A.I:添削されてたの?
日野:わざと違う漢字を使ってみたりして、それがイタ過ぎたのかもしれない(笑)。
里見:見たいけども、多分イタイと思う(笑)。
A.I:この流れでだんだん思い出してきた……。高校生の時に、文芸部サークルに入ってたの。そこで詩のようなものを書いていたことがあるけど、あまりにもイタすぎて・・・。
里見:それ見てーなー。
A.I:やめてくれ(笑)。人生から抹消してるから。
里見:えーちゃんがそれを出すんだったら、俺も高校時代のはじめて書いた詩を5篇出すよ。それで歌クテル6号出すぞ。
一同:(爆笑)
里見:歌クテルクロニクルで、タイトル「原点」って(笑)。
日野:「あの頃君は若かった!!」って。
里見:俺、そのためなら部屋掃除して、とっといたプリント全部出すよ。
日野:実家帰りますよ、そしたら(笑)。
A.I:わたし結婚する時、実家からほんの少しだけど回収してきたよ。
里見:アハハハ!!
日野:嫁入り道具だ(笑)。
A.I:でも、ほとんどは捨てちゃった。わたし、若い頃に書いたものとか手紙とかで、実家で焚き火しちゃったの。
里見:えーちゃんのエピソード、なんでそんな昭和48年〜52年ぐらいの香りがするの。焼かねえよ手紙(笑)。
A.I:うちの母ちゃんが言うには、母ちゃんは若い頃はすごくもてたんだって。でね、もらったラブレターを燃やして焼き芋を作った、というエピソードを聞いてて。真似してみたかった。わたしのはラブレターとかじゃなかったし、焼き芋も焼けなかったけど(笑)。


歌クテルwebマガジンは一周年を迎えました。

こんにちは、さねともです。

いつもご覧になってくださる皆様には、心より感謝を申し上げます。

おかげさまでこの歌クテルwebマガジンも一周年を迎えることができました。最近はちと更新が遅延しておりますが…(ごめんなさい)この更新を終了する時は必ず宣言しますので、あ、いや、そうならないようにする方が先です。まだまだ更新いたしますので、どうぞこれからもよろしくお願い申し上げます。

もともと『歌クテル』というのは手に取って読める雑誌だったのですが、本誌『歌クテル』は現在5号で休刊となっています。しかし「休刊」ですから、いつかまた6号が皆さんのお手元に届く可能性がないわけではない。その日まで『歌クテル』を絶やさないように、このwebマガジンがあります。

私が管理人を引き受けたのはそのためです。初心に返って更新を続けてゆきたいと思っています。毎週日曜日のアクセス数の多いことが、とても励みになっていますよ。

さてさてそんなわけで、今回は一周年特別企画をお届けします。

何をするかといえば、笹井宏之さんの歌について書こうと思っています。

さきにこのwebマガジンでA.Iさんが触れてくれましたが、笹井さんの歌集がここ最近、三冊刊行されました。特にオンデマンド出版だった第一歌集『ひとさらい』が書店に平積みになっているのを見た時、感激してしまいましたよ。素晴らしい、光景でした。今日はそれらの中からいくつか歌を紹介したいと思います。

さてひとくちに笹井短歌について書くといっても、あの短歌史における突然変異のような作品は、どうにも書きづらいです。語れば語るほど、嘘くさくなるのが関の山。「説明は要らない! とにかく読んでください!」と言ってしまいたくなります。


【文語短歌】自由自在・その9【古典和歌】

こんにちは、さねともです。

私の連載はおもに文語短歌と古典和歌について書いてます。いまは文語の学習方法という、自分でもそんなの始めて大丈夫なのかというくらい無謀な試みをやっています。

でもこの試みについては、本当に伝えたいのは「文語を学習する時間がもったいないから口語の方がいいよ」ってことであり、また文語がどんなに面倒臭いかを知らしめたいと思うものでもあります。

はっきり言っちゃえば、一人でも多くの人に文語で詠むことをあきらめさせたい。それが狙いだったりします。

短歌は最初は模倣から入る。これは口語も文語も関係なく、模倣から始めない人はいないと思う。文語の場合は特にそれが顕著で、お手本がないことには始められないし、それにも増してお手本となるべき文語短歌の入手しやすいものになるとどうしてもひと昔もふた昔も(場合によっては何百年も!)前のものになってしまう。

どうしたらいいんでしょうね。

一つには、文語を短歌から学ばないというのを掲げました。文語の文章をとにかく読みあさることで、かなりの部分をカバーできると思います。そのための資料は前回お知らせした通り。

では次の段階は?

これであります。「師となる人を見つける」。

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